ある医大生のぼやき

証券会社で勤務ののち、医学部に入学しました。

心電図検定3級の対策・勉強法

研修医のアンケートなどで「勉強しておけば良かったこと」として挙げられる機会が多い心電図。そんなアンケートを見ながら先にやっておこう、と思い心電図の勉強を始めました。しかし、どのように勉強をすれば良いかもわからず、ひとまず心電図検定に向けて勉強しました。今回はその備忘録を兼ねた記事になります。

心電図検定はその名の通り、心電図の臨床的意義を解釈するスキルを評価する検定試験です。難易度に応じて1級から4級まで用意されており、年一度受験機会があります。

(2020年度はコロナの影響もあり、2021年1月に延期されました。来年以降も1月に開催されるようです。)

 

new.jhrs.or.jp

 

僕の受けた3級は「一般臨床医レベル」という位置づけですが基本レベルの解読?能力があれば解ける印象です(受験会場は20代前半くらいの方が多かったです)。

勉強法を大きく3ステップを分けるとすると、

 で3級に関しては受かるんじゃないかと思います。2021年1月実施の試験に関しては合格率が76%程度とかなり高いです。前年度も同様に高い合格率になっています。従って主要な疾患を判別することができれば十分に合格点はもらえる試験ということが推察されます。2級以上の級になるとまた違ったアプローチが必要になるかと思いますが、受けてないのでわかりません。

1.基本用語の理解、アプローチ法の確立

 心電図に登場する四肢誘導と胸部誘導ですが、それぞれの誘導がどの部分の電位変化に対応しているのか、PQRSTUのそれぞれの波形が心機能の何と対応しているかなど、基本的な用語や定義を最初に把握しおく必要があると思います。例えば、胸部誘導において「V1~V6が心臓のどの部分に対応しているか」は病変(心筋梗塞など)の部位を判断する上でも重要です。個人的にはこの作業には時間をかけても良いように思います。

それらを踏まえた上で、心電図の「どういったポイントに着目するか」、「どういった順序で確認するか」、といった解読のアプローチ法を早い段階で身につけるのが大事だと思います。

僕としてはYoutubeで心電図を解説されている米山先生の動画がおすすめです。

臨床の第一線で活躍されている先生の動画はとてもわかり易いです。心電図検定向けの動画は前編後編からなり、それぞれ100分ほどの長さです。心電図検定に登場する疾患について、見落としなく心電図を確認する手順を身につけられます。心電図検定を受けるに当たり、僕自身も問題へのアプローチ法は米山先生の手順を覚えて使いました。詳しくは動画を見ていただければと思います。

病気の知識もなく、いきなり見て大丈夫か、と思われるかもしれません。しかし、勉強始めたての段階では何から手をつけていいかわからない方が大多数だと思うので、何が必要になるのかをまず把握する必要があります。一通り観ると「こんな病気があるんだ~、こうやって読むんだ~!」となり、むしろ勉強のゴール地点が見えるようになるため、とても参考になります。 

 

www.youtube.com

 

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2.公式問題集に登場する疾患を覚え、自分なりにまとめる

 基本用語とおおまかな解読手順を覚えたら病名と心電図を一致させる作業に入ります。実際に各種疾患が心電図上にどのように現れるかは一度まとめて全体像を俯瞰したほうがわかりやすいと思います。その上で「どの範囲まで勉強するべきか」、に関しては公式問題集に出ている疾患をまず抑えておけば合格点は取れそうな印象です。

問題集を開くとWPW症候群やらブルガダ症候群やら聞き慣れない単語がたくさん出てくると思いますが、それぞれの疾患について「心電図上の特徴」を把握する作業を一通り行います。 

ここまでの段階でパターン認識をある程度できるようになっておくのが理想です。解読のアプローチと照らし合わせながら行うとより効果的なのではないでしょうか。

解読が徐々にできるようになったら再度問題集を解く、米山先生の動画を見るなどして定着させていきましょう。

 

 

3.詳細な生理学的メカニズムを理解する

 「波形→疾患」のパターン認識ができるようになれば問題自体は解けるようになると思います。加えて「なぜそういった波形になるのか」、を詳しく調べて自分なりに理解を深めると良いように思います。僕は「心電図の読み方パーフェクトマニュアル」を辞書のように用いて追加的な学習を行いました。少々お高いのでまずは図書館で借りて、中を観てから買ったほうが良いでしょう。

公式問題集に登場する疾患についてまとめる際にこちらを用いても良いと思います。

生理学的な理解をもっと最初の段階でしたほうが進めやすい、という方はまず一通りこういった網羅本で勉強するのも手だと思います。僕自身は効率性重視なので、2級、1級とステップアップしてく過程で必要な知識を身に着けていけば良いと思っています。

 

心電図の読み方パーフェクトマニュアル
 

 

3級の試験結果ですが、僕の得点ランクはB(40~44点/50点満点)でした。満点近く取るにはさらに勉強する必要がありますが、合格点を取るという観点では上記で十分なように思います。

 

 

 

 

相対的に忙しい診療科はどこか⑤(総合ランキング)

 前回は、診療科目間の忙しさを異なる指標を基準に偏差値化して比較してみました。

desmoglein.hatenablog.com

それぞれの指標(勤務日数、休日出勤数、当直回数)で科ごとの特徴が掴めてたのではないかと思います。

今回はこの3つの指標を総合して忙しさのランキングを作ってみます。もちろん挙げた3指標以外にも忙しさを測る物差しはあると思いますが、同一の統計から得られるこれらの指標に限定して計算します。

ここではそれぞれの統計値を標準化し、得られたZスコアの合計値を更に偏差値に換算してランキング化します。

ウェイトをどうするか

次に合計する際のウェイトを考えます。単純に3つのZスコアを合計してもいいのですが、指標間での類似性・それぞれの項目が医師の生活に与える影響の差は考慮する必要があるかなと思います。

(もちろん忙しさの感じ方は様々ですので、以下は僕の妄想と偏見です笑)

自分が社会人だったときのことを思い返すと、恒常的に業務が多い・労働時間が長いと忙しく感じた記憶があります。普段の業務が忙しくなければ、突発的に土日勤務が入ってもなんとかなります。逆にいつも忙しい場合、ちょっとした業務の増加でも負担を強く感じます。従って、勤務日数の多さは忙しさの基調を決めると仮定します。

次に、勤務日数以外の2つについて考えます。常に忙しい状況で、土日勤務と当直のどちらが負荷感に繋がりやすいといえるでしょうか。まだ学生なので妄想の域を出ませんが、睡眠不足に直結しそうな当直がより大変そうです。定期的に休息が取れていれば連勤もなんとかなりそうですが、当直後に続けて勤務を行うのは体への負担が大きそうです。従って、土日勤務より当直回数のウェイトを重くすることにします。

以上の簡単な推測からウェイトを

「勤務日数」:「当直回数」:「土日勤務日数」=3:2:1 

と置くことにします(あくまでも目安です)。上記のウェイトで順位を計算した結果が下記の表になります。

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臨床研修医が最も忙しいという結果に

 診療科では産科が首位

全体の順位では臨床研修医が1位となり、診療科では産科が首位となりました。

臨床研修医に関しては、最もウェイトの大きい勤務日数のランキングで1位であり、他の指標でも上位に入っていたため、数字の上では特に驚きはありません。臨床医になる誰もが通る道ですが、その生態はなかなかにハードであることが見受けられます。

産科は勤務日数、休日出勤数で上位にランクインしていることに加え、当直日数では他の診療科に差をつけて1位となっていることが、今回の順位の背景と言えそうです。赤ちゃんの誕生に立ち会うことのできる素晴らしい科だと思う反面、このような恒常的な忙しさや無視できない訴訟リスクは事前に検討する必要があると言えるのではないでしょうか。

 

外科系は全般的に忙しい

診療科の中で2位となった心臓血管外科を始めとして、上位には外科系の診療科がずらりと並んでいることがわかります。美容外科、形成外科や乳腺外科といった一部の科を除いて、すべてが平均(=総数)より上位に位置しています。外科を志す以上、ある程度の忙しさは覚悟する必要がありそうです。

内科系では循環器内科が抜きん出る

外科系が殆どを占める上位において、内科系では循環器内科が上位に食い込んでいます。内科系2位の血液内科や3位の呼吸器内科とも順位が離れており、一歩抜きん出ていることがわかります。循環器系の不調が生命に直接的に関わることもあってか、忙しい労働環境に身を置いているケースが多いのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

相対的に忙しい診療科はどこか④(偏差値で考える)

これまで3回にわたって忙しさの指標となりそうな統計データをまとめ、ランキング化してきました。診療科目内でどの程度異なるのか、ある程度把握できたかなと思います。

今回はこれまでに挙げた指標、すなわち「勤務日数」、「休日出勤数」、「当直回数」について各診療科目の偏差値を計算してみます。偏差値化すると標準偏差が反映されて診療科ごとのバラつきがわかりやすくなります。

①勤務日数

集計対象となった特定の1週間で働いた日数を順位化しています。休みを取っている医師の比率が高ければ、その診療科の平均勤務日数が少なくなります。「普段の忙しさ」、「休みの取りにくさ」の指標とここでは捉えます。

臨床研修医が唯一70台に乗せていますね。休みを取りにくい実態が反映されているように見て取れます。一方、精神科と心療内科は30を下回っています。分布のかなり下に位置しており、圧倒的に勤務日数が少ないことがわかります。

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勤務日数

②休日出勤日数

1週間で5日超えて働いた日数の平均値を順位化しています。勤務日数と近い指標ですが、「土日休みのとりにくさ」とここでは捉えています。

肛門外科が唯一偏差値80を超えおり、なんらかの理由で土日休みが取りにくい状況があるようです。最下位の精神科は偏差値30ちょっと。勤務日数も少なく、休日出勤も少ないことがわかります。

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休日出勤日数

③当直回数

産科の当直日数が唯一偏差値80を超えています。救急科との差も大きく、圧倒的に当直回数が多いことがわかります。美容外科は開業主体と考えられるため、偏差値30台なのも納得です。

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当直回数

 

出典:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

相対的に忙しい診療科はどこか③(当直回数)

医者同士の忙しさを比べる本企画の第三段では当直回数に注目します。これまで、統計調査の対象となった「2018年の12月1日~7日」の一週間における「勤務日数」「休日出勤を行っている医師の割合」の2つの側面から忙しさを比較しました。ただ、病院関係者特有の「当直」も忙しさを比較する上では当然無視できません。

各診療科目ごとに「2018年の12月~7月」にかけてどの頻度で当直を行ったかについて統計も厚生労働省がまとめています(1回から9回まで*1)。これを人数をウェイトに加重平均を計算し、順位を整理したのが下図になります(月当たりの当直回数に調整)。

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診療科別の当直回数(1ヶ月換算)

全体平均は1.84回/月

まず、医師の平均である「総数」を見ると、一ヶ月あたり1.84回であることがわかります。普段の勤務に加えて夜間の当直がある場合、30時間近く連続で働くことを意味します。これが月に2回弱あるというのは決して小さくない負担のように僕は思います。

産科の当直回数が最多

なんとなく想像はついていましたが、周産期医療に携わる「産科」の当直回数が一ヶ月あたり5.20回で最多になりました。いつ子供が生まれるかわからない状況下、24時間体制で取り組む必要があることから、当然当直回数も増やす必要があるようです。

2位は「救急科」の4.56回/月。こちらも、「産科」と同様に24時間体制で取り組む必要があるためか、広く当直が行われていることが伺えます。

ただ、「産科」も「救急科」が他の診療科に対して当直回数が明らかに多く(3倍近い)、単に24時間対応する必要があるというよりは、人手不足の側面が強いのかもしれません。例えば循環器内科といった科でも、24時間体制で患者の対応に取り組む必要があるのは明らかです。特に産科は勤務日数の多さでも全体で五本の指に入り、「休めない」かつ「当直が多い」という実情が浮かび上がって来ますが、人手不足が深刻であることの裏返しと言えるかもしれません。

美容外科を除くと病理診断科が最少

41診療科の中で最も当直回数が少なかったのが「美容外科」です。この科を標榜する医師のほとんどが開業しているか、診療所に勤務していると考えられるため、当直回数が月0.04回と最少なのは当たり前と言えるかもしれません。入院が必要ないケースが多いというのも理由として考えられそうです。

開業という観点で言うと、「内科」の当直回数が平均を大きく下回っているのが目に付きます。内科を標榜する診療所勤務の医師(=開業医)が全体を押し下げている可能性がありそうです。

美容外科」についで当直回数が少なかったのが「病理診断科」。術中迅速診断などを除き、確かに病理診断などは比較的自分のペースで進められそうな印象はありました。検査や診断に主眼をおいているという点で「臨床検査科」も同様のワークスタイルなのでしょう。3番目に当直回数が少なくなっています。当直回数を抑えるという視点だと「病理診断科」や「臨床検査科」は良いのかもしれません。

 

出典:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

*1:1週間で9回も当直できるんでしょうか。。

相対的に忙しい診療科はどこか②(休日出勤数)

診療科間で忙しさを比較するシリーズの第二弾では休日出勤に焦点を当てます。

前回は単純に勤務日数を比較しましたが、これはあくまでも平均値を用いた比較です。診療科によっては分散が大きく、一概には比べられないのも事実です。今回はより直感的に把握することを目的に、休日出勤している医師の比率を比較します。

前回同様、いつもの厚生労働省の統計を用います(リンクURLは下に記載)。この統計では12月1日から7日にかけて働いていた日数が得られます。そこで、5日を超えて働いている日数=休日出勤の日数として便宜的にカウントます。例えば、6日働いている場合、最低でも1日は休日出勤しているとみなし、休日出勤数を1日とします(平日に休んで土日に働いている場合は想定していません)。

診療科目ごとに上記の定義で休日出勤した医師の比率をまとめたのが下図になります。

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肛門外科が群を抜いている

研修医を抑えて肛門外科がトップ

まず全体像把握のために「総数」の項目をみると、少なくともおよそ18%の医師が12月1日から7日の週において休日出勤していたことが見て取れます。5人に1人が休日出勤をするというのは民間企業で働いていた自分からするととても高く感じます。やはり、総合的に見ると医師は忙しいですね。。。

個別の順位では、「肛門外科」が最も高い結果となりました。その比率は31.19%に達し、全体の三分の一近くが休日出勤をしていることになります。勤務日数でトップだった「臨床研修医」が2位となり、その比率は23.44%であることから、「肛門外科」の突出具合がわかります。「肛門外科」は分類的には「消化器外科」に入りそうですが、本統計では独立してカウントされています。「消化器外科」の休日出勤率が16.89%であり、全体平均よりも低いことからも、肛門外科の特異性が伺えます。

3位には22.43%で「内科」がランクイン。勤務日数では「外科」の4.91日に対して「内科」は4.69日と少なかったのですが、休日出勤の頻度という点では「外科」を上回りました。ただ、上位を眺めると、やはり外科系で休日出勤率が高いですね。

精神科の休日出勤率が最小

一方、休日出勤率が最小になったのは「精神科」でした。唯一の6%台で、次点の放射線とも差が開いています。

勤務日数では上位に入っていた気道食道外科臨床検査科が休日出勤率では下位にあることも見て取れます。呼吸器内科血液内科もそこまで明確ではありませんが同様の傾向です。

 

出典:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

医師の平均年齢で地図を色分けると??

初めて書いた記事が2016年のデータに基づく都道府県別の平均年齢についてでしたが、エクセルの新しい機能を試したくて2018年のデータで改めて記事を書くことにしました。まとめたデータが下図になります。

東京都が最も若く、山口県が最も高齢

順位の入れ替えはありましたが、東京都が一番若く、山口県が最も高齢という結果は2016年から変わりません。ただ、これまで0.5歳だった2位の神奈川県との差が1.0歳まで拡大し、東京都における医師の若さが突出していることがわかります。

2年間で変化した部分として全体的な高齢化が挙げられます。全国で平均年齢が0.3歳上昇しました。特に沖縄では平均年齢が+1.1歳と急上昇しており、背景が少々気になります。また、最も高齢化の進む山口県も0.6歳と、比較的上昇幅が大きくなっています。

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2016年と同様に東京が最も若い

日本地図を色分けると?

2016年の記事では、都市部において医師が平均的に若い点を指摘しました。実際にどのように平均年齢が分布しているかを可視化したのが下図になります。年齢の分布が一目瞭然ですね(エクセルの新機能、なかなか使えそうです)。やはり大きな都市がある都道府県では平均年齢が低いことが確認できます。同時に東京都の若さと山口県の高齢化も際立っていることがわかります。

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都市部で平均年齢が若い傾向がある