ある医大生のぼやき

証券会社で勤務ののち、医学部に入学しました。

相対的に忙しい診療科はどこか③(当直回数)

医者同士の忙しさを比べる本企画の第三段では当直回数に注目します。これまで、統計調査の対象となった「2018年の12月1日~7日」の一週間における「勤務日数」「休日出勤を行っている医師の割合」の2つの側面から忙しさを比較しました。ただ、病院関係者特有の「当直」も忙しさを比較する上では当然無視できません。

各診療科目ごとに「2018年の12月~7月」にかけてどの頻度で当直を行ったかについて統計も厚生労働省がまとめています(1回から9回まで*1)。これを人数をウェイトに加重平均を計算し、順位を整理したのが下図になります(月当たりの当直回数に調整)。

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診療科別の当直回数(1ヶ月換算)

全体平均は1.84回/月

まず、医師の平均である「総数」を見ると、一ヶ月あたり1.84回であることがわかります。普段の勤務に加えて夜間の当直がある場合、30時間近く連続で働くことを意味します。これが月に2回弱あるというのは決して小さくない負担のように僕は思います。

産科の当直回数が最多

なんとなく想像はついていましたが、周産期医療に携わる「産科」の当直回数が一ヶ月あたり5.20回で最多になりました。いつ子供が生まれるかわからない状況下、24時間体制で取り組む必要があることから、当然当直回数も増やす必要があるようです。

2位は「救急科」の4.56回/月。こちらも、「産科」と同様に24時間体制で取り組む必要があるためか、広く当直が行われていることが伺えます。

ただ、「産科」も「救急科」が他の診療科に対して当直回数が明らかに多く(3倍近い)、単に24時間対応する必要があるというよりは、人手不足の側面が強いのかもしれません。例えば循環器内科といった科でも、24時間体制で患者の対応に取り組む必要があるのは明らかです。特に産科は勤務日数の多さでも全体で五本の指に入り、「休めない」かつ「当直が多い」という実情が浮かび上がって来ますが、人手不足が深刻であることの裏返しと言えるかもしれません。

美容外科を除くと病理診断科が最少

41診療科の中で最も当直回数が少なかったのが「美容外科」です。この科を標榜する医師のほとんどが開業しているか、診療所に勤務していると考えられるため、当直回数が月0.04回と最少なのは当たり前と言えるかもしれません。入院が必要ないケースが多いというのも理由として考えられそうです。

開業という観点で言うと、「内科」の当直回数が平均を大きく下回っているのが目に付きます。内科を標榜する診療所勤務の医師(=開業医)が全体を押し下げている可能性がありそうです。

美容外科」についで当直回数が少なかったのが「病理診断科」。術中迅速診断などを除き、確かに病理診断などは比較的自分のペースで進められそうな印象はありました。検査や診断に主眼をおいているという点で「臨床検査科」も同様のワークスタイルなのでしょう。3番目に当直回数が少なくなっています。当直回数を抑えるという視点だと「病理診断科」や「臨床検査科」は良いのかもしれません。

 

出典:平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/18/index.html

*1:1週間で9回も当直できるんでしょうか。。